ハサミを買いました。ハイテクなはさみでもなく、普通のハサミではありません。「糸きりはさみ」や「にぎりはさみ」と言われる、ハサミです。日本人であれば見た事があるはずのあのお裁縫セットに入っているハサミです。
この記事のあらすじ
俺氏:ついに魂を宿す”はさみ”をゲッツ!!
A氏:良いものを手に入れたな。日本の職人の手作りか?高いだろ?
俺氏:そうなんですけど、Amazonで1000円くらいです!
A氏:日本の職人も減ってきているからこれから貴重なものになるかもな
俺氏:とにかく使い込んでいきますよ
A氏:ああ、繊維業の人は大体糸きりはさみ持っているからな。十数年いや、数十年同じものを使っている猛者もいるぞ
俺氏:ええ、実際その人たちに憧れて買いました。使い込んで自分の指先くらいになるまで使い込みますよ
A氏:使い過ぎだな。まぁ怪我しない程度に頑張れや
伝統を味わい、道具に魂を宿すために購入
「伝統を味わい、道具に魂を宿す」プププッ(笑)。自分で言っていて恥ずかしいですが、本気でこのハサミを買う時はそう思ったのです。昔から糸きりハサミの利便性には目を見張るものがありました。
さっそく、私が購入したハサミがこちらです。
越後職人の糸きりはさみ(日本製)、Amazonさんで購入しました。1,000円前後で売っています。職人がひとつひとつ手作りで作り上げた糸きりはさみです。これを安価に購入することができるのですから、日本に生まれて良かったですね。
海外に居るとこのレベルの糸きりハサミは見かけませんし、ほとんど手に入れる機会がありません。日本に居る事で高い技術を持った職人が作ったものを手に入れるチャンスは勿論、とても安く購入することができるのです。日本に住んでいると当たり前過ぎて気が付かない部分ですが、海外で生活する機会が増える中でしみじみ思いますね。
写真で見るよりも現物は無骨な感じで、箱から出した時の輝き美しい中にも荒々しい部分が見受けられ、小ぶりながら迫力を感じました。さすがは日本の職人が手作りしたものです。どこか芸術性さえ感じます。
糸きりはさみは、小学校の時の家庭科の時間によくミシンの糸などを切るのに使っていた記憶はありますね。糸きりハサミというくらいですから、普通のハサミに比べてどうしてこれほど切りやすいのであろうかと不思議に思いましたし、今でも思っています。
あまりに精度良く切れるので鼻毛のカットに使っていましたね(※危険なので止めましょう)。
そんな私にも人並みにオシャレする心が芽生え、色々ジーンズやシャツなど買い揃えていくうちに少なからず糸の端末が気になっています。普通のハサミで充分処理できますが、仕事柄実は糸切りハサミを使う機会がありまして(どんな仕事だよ)、長く大切に糸切りハサミを使い込んでいる職人の方も居ますし、そのハサミを日本の職人さんが丹精込めて作っていることを知って、何かと凝り性な私ですから購入しようと考えました。
日本の刀の技術が今、糸切りハサミ・にぎりハサミに凝縮されているのです。ハサミを作っている職人さんの粋な技術を感じたかったのです。
メイドインジャパンの技術を詰め込んだハサミですから研げば長く使うことができます。道具というのは大切に使い込んでいくと魂が宿ると聞きます。技術職のあるあるですね、レンチやドライバーなど大事に使い込んでいくとその人に馴染み世界に2つと無い使いやすい道具となり魂が宿るとまで言われるのです。ITボーイの私ですが、男の子ですから何だか憧れてしまうのですよね。
糸きりハサミの歴史
握りはさみは「和はさみ」とも呼ばれておりますが、その起源は古代ギリシャの青銅製で羊毛を刈るはさみが最古の一つとされています。ギリシャ→インド→中国→日本と伝わってきました。
① 日本最古のはさみは奈良県の珠城山古墳の出土品の渡来品のはさみ
② 正倉院の御物の金銅剪子という金属を切るはさみ(中間支点型)
③ 北条政子の化粧用の握りはさみ(鶴ケ岡八幡宮所蔵)
④ 池坊のU字型握り華道はさみ(室町時代)
⑤ 徳川家康の遺品の鋏 (藤原信吉作)=U字型の日本鋏
ハサミが庶民の生活用具として定着してくるのは江戸時代の寛政(1789年から1801年までの期間) 以降のことです。そう考えるとハサミの起源・日本への伝来、日本で日常的に使うようになるまでに随分と時間が経っているわけですね。
今では文房具としても必需品のハサミですが、現在ではハイテクに使いやすくより安全に、より効率よく切れるハサミが登場しています。
それでも普通のハサミではなく糸きりはさみを買う価値はあると思います。繊維業の職人たちは大体My糸きりはさみを持っていて使い込んでいます。そして口々に「これが一番使いやすい」と言うのです。やはり細いもの、繊細なものを切る時は刃先のコントロール、切ったあとの端末が綺麗など機能的なメリットも多いですね。
【芸術レベル】水池長弥(Osami Mizuike)氏の作品
『美しすぎる糸きりはさみ』を紹介します。作者は水池長弥氏です。手作りとは思えないような精巧なフォルム、使っている素材の鋼は耐久性が最上級のものです。むしろ機械で出来ないレベルなのでしょう。日本でいや、世界でも数少ない糸きりはさみ作りの名工です。手作りできるのは彼ひとりではないようですが、彼の作品は国内外で高い評価を得ています。
後継者は未だおらず、これだけの完成度の糸きりはさみは今後現れないかもしれません。それもそのはず、何年も修行を重ねて、しかも労働環境も良いとは言えない肉体労働なのです。そして、糸きりはさみの需要も多くない時代ですから、志す人は少ないというのは理解できます。
しかし、ハサミという枠を超えて一目で見惚れるものづくりは受け継がれてほしいものです。国産の糸きりはさみが希少なものになっている状況であるからこそ、尊く・はかないものに感じるのでしょう。こんなに素晴らしいものを手に入れられるのは今だけかもしれません。
ちょっと値が張っても良い品物を家に置いておきたいという、コレクター気質の私は買いたい気持ちで一杯です。まぁ今、越後職人の糸きりはさみ(日本製)を買って持っていますし、道具は使わないと可哀想です。使う頻度など需要と供給のバランスをみて買うか買わないか判断します。
一緒に国産の糸きりはさみを使いましょう
この記事のまとめ
- 糸など細かいものを切るのに最適
- 切ったあとの端末が綺麗
- 長く使える
- 手に馴染む
- 日本の職人技・伝統品
- 国産手作り品は希少
- 使い込み事で唯一の道具となる
機能的にも希少という面でも日本の職人が作った糸きりハサミには買う価値があります。特に繊維業界の皆さんには持ち手がプラスチックのものなども良いのですが、こういった職人が作ったものを使って頂ければと思います。
繊維業の糸端末を処理することが多い方、使う機会が多ければ多い程、職人の方々が作ったハサミはアジが出て手に馴染みさらに使いやすくなることでしょう。
繊維業界のみならず、衣類等に触れる我々全員にこの糸きりハサミは使う機会が必ずあるものです。普通の文房具屋さんやコンビニで売っているハサミでも良いのですが、世界に誇る技術をもった日本の職人が作ったハサミを一家に1つは置いておくと如何でしょうか。
必ず、「おっ、このハサミの方が良いな」と思う瞬間が訪れます。これからの日本の職人さんの作った素晴らしいハサミを手に取られるのが当たり前に続くことを願っております。