最近の物流のおしゃれワード「QR」について語りたいと思います。Quick Responseクイックレスポンスの略で、消費者の要求に応えるために生産から販売までの期間を短縮して在庫回転を良くする取り組みことです。

サイトによっては、ローコスト化を実現するためとありますが、普通に考えて急いで製造するのにコストを安くなるのは難しいと思います。

起
生産期間や納期を短くして品質は大丈夫なのか?

短期間で作った製品に関して、品質面は悪くなる傾向にあると思います。例えば納期を間に合わせるために材料も必要で、製品を作るためには機械や人手が必要です。機械的にも人手的にも対応可能な範囲は物理的に決まっているので、それでもどんどん短くしているわけですから、確認・修正する時間もないということです。

小学生の夏休みの宿題で、残り1日で全部やるとなると正直やっつけ仕事ですよね。あくまで例ですが、やっていることはこれに近いことになります。

QR」だったり「生産サイクルの短縮」をうたっているのは、大体は小売業・卸業・仲介業といった製品を仕入れる側の企業です。そう、肝心の生産するメーカー発信ではないことが多いです。それはそうですよね、メーカーからすれば、年や月々・日々生産できるキャパシティはある程度決まっていて、度を超えて早い納期を求められると、残業など割増しのコストが発生してしまいます。特に日本などはクレーム大国なので、おかしな製品を出すとクレーム対応や取引にも響きます。

考えてみるとすごい話ですよね。メーカーに品質面を求められている上に、早さまで求められて、しかも品質と早さは相反するいうジレンマを抱えるわけですね。

メーカーからすればある程度キャパシティが埋まっていて、品質確認や問題があった場合にも対応できるような期間が欲しいわけです。

承
どうして「QR」や生産サイクルを短くしたいのか

どうしてQRなど生産サイクルを短くしたがるのかというと、その方が、小売業・卸業・仲介業といった製品を仕入れる側にとって都合が良いからです。

消費者のニーズに早く対応するという大義名分がありますが、トレンドの面や途中の売り行きやコロナウィルスといった出来事など修正などできたほうが、売れ残りなどの在庫を抱える必要がないのです。商品を仕入れて売れるスパンも短ければそれだけ在庫しておく倉庫などの経費も減ります。

仕入れ側・販売側というのは、消費者が欲しいと言ったものをすぐに作って、欲しいと言っているうちに直ぐに売りたいと思っています。しかし受注生産となると都度原材料を手配しなければならず、時間も掛かります。製品によっては原材料や生産のロットになりません。でも消費者はすぐに欲しいと思っています。

製造面では前もってある程度の数量でないと生産スペースを確保できないことと、製品を予め仕入れた在庫を店頭に並べて消費者に手にとってもらうようにするわけです。

そのためには例年のデータをもとにある程度の生産数などの枠を決めて生産するのです。その計画を組む役割はとても重要で、正しく例年のデータを分析できているか、市況を見極めなければならなりません。

そうした生産数量・計画を組む人がやりがちなことが、「QR」や生産サイクルを短くするという行為です。要は計画組むの難しいから、後出しで対応するかということです。稀に在庫がなくなって急遽手配くらいであれば対応できるかもしれませんが、それが常態化すると単に工場のみ品質面もスピードもリスクをとって納期に間に合わせる構造になります。

買い手側(仕入れ側・販売側)というのはメーカー側からしたら基本的にお客さんなので、力関係があります。

機械化しているとはいえ、工程によっては手作業でなければできないわけで、運送手段や使用面の簡素化などの努力をしない限りは物理的に時間を短縮することは難しいです。

転
商品を早く供給するために必要なことは何なのかもう一度考えるべき

どうもQRという言葉に違和感を感じます。商品を作っていない仕入れ側や販売側がこの言葉を使っていて、メーカー発信ではないことです。

メーカーは常に尻を叩かれているので、更に早く対応するという余裕はもうないです。前段階の連絡が遅ければ遅いほど命取りになります。しかし当の小売業・卸業・仲介業はもっと様子を見てからメーカーへ生産をパスとしているところが少なからずあります。

納期に間に合わなければメーカーの責任ということが製造業界です。

当たり前なことですが、早い仕入れは早い段取りを行うが基本。小売業・卸業・仲介業の方で横着して、切羽詰まら前にメーカーさんにその部分も委託してしまった方が上手くいくかもしれません。

仕入れのスケジュールを組んで毎回その計画よりも遅れているということが少なくないです。その計画通りにいかないのは全ての関係者の責任です。

何度も納品遅れをするのであればそれは生産地だけの責任ではありません。生産の能力を把握した上で、生産能力のあるメーカーに頼むのか、サプライヤーを増やすのか、手を打つべきです。物理的に無理なものは無理なのです。

結
生産期間や納期の短縮化は品質の低下を招く

流行りのものを早く欲しいというニーズはあるかもしれませんが、僕なら生産をする人々が過剰な労働を強いられることなく、品質確認もしっかりしている商品を優先して買いたいです。それがなかなか見えないから難しいのですが。

SDGsなど表上はクリーンをうたっているのにクイックデリバリーなど納期がむちゃくちゃな企業は裏で生産地にムチ打っている場合が多い。大きな企業となれば尚更、仕入先と生産地(メーカー)との間でパワハラが起こっています。

中国の新疆ウイグル地区などニュースに挙がりますが、世界中の生産地ではフェアとは言えない取引があると思います。それが資本主義の側面と言えるのかもしれませんが、自分の利益を多くするために他社の利益を少なくする部分もあります。それをやっていたら共に成長するのではなく、奪い合いのゼロサムゲームですね。

リサイクルや再生物質を使った商品を作って、消費者に環境への配慮しているイメージ戦略を行っている背景で、実はリサイクルや再生物質の方がコストが高く、そのしわ寄せがメーカーに来ていることが少なくありません。

企業が気をつけなければいけないのは、表向きにはフェアトレードやエコという振る舞いに反して、クイックレスポンスを達成させるための残業といった矛盾が生じていないかどうか。

規模が大きく力のある企業が、メーカー(生産地)へ立場的に強い要望することが多いと思います。そのおかげで、価格も安くできたり利益を多く得られたり、発注をしてから早く商品が届いたりするのですが。

裏側や事実を知っている生産地も徐々に声を上げるパワーがついていきます。大小の違いはあれど弱者的な立場が世論の追い風を受けることもあるでしょう。

『生産期間や納期を短くして品質は大丈夫なのか。』みなさんの答えはいかがですか。

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